パーツに分けて紹介します。
その前に、it's time for jazzの作品について・・・
製作のコンセプト。
それは、<music・jazz>を感じられる作品を作ることです。
クラフト的な面白さは、jazzのスリリングさを表現するのに必要なことで、完璧なクラフ ト作品を作ることを目的にしたものではありません。
クラフトとして、どうかな?と、迷うことも、あるのですが、(稀に販売するこ とがあるため)jazzらしさの表現を優先しています。
例えば、saxやtrumpetは無塗装としています。ピカピカの金管楽器は、綺麗だと思いますが、 あえてハンダ付けの色を隠さず出しています。 その方が、使い込んだ楽器の雰囲気が出て、より<jazz>らしさを感じるからです。 もう一つは、部材の継ぎ目の塗装溜まりが、楽器の微妙な詳細を隠してしまうからです。 楽器は、リアルでシャープなほど、<jazz>らしいと感じています。
私の好みなのですが、jazzの演奏を聴いていても、あまり完璧な演奏よりも、手作り感を感じられるような(少し下手でも)演奏が好きで、やはり、クラフトも同じように、手作り感の強いものに惹かれるところがあり、作り方が解るような仕様にしています。
繊細なクラフトを見て感動することがありますが、その時の驚きや、作品から感じる ユーモア等が、jazzの即興を聞いたときの感覚と、よく似ているので、そんなところを 大事にしています。良い演奏は、小さな音、短い音符でも心がこもっていると思います。
私は、キャラクターは、頭から作り始めます。
体のパーツをくみ上げる時、何度も全体のバランスを確認しながら進めます。 その時に、早い段階で、頭があった方がやり易いからです。バランスの調整だけの目的なら 仮の頭を付けておいて、最後に取り替えても良いのですが、私は、頭を作る段階で完成の イメージを持つようにしています。
もちろんtrumpetとsaxは、直接、顔と楽器が接するので、口の周りの作り方が違うの ですが、bass、piano、drum、とguitarの場合、一つの頭で全部の楽器奏者に転用出来そうに 思います。でも、何となく私なりに楽器毎の演奏者のイメージがあるので、私は、持たせる楽器 を想定して、頭を作ります。
例えば、ピアニストは、何故か、メガネをかけていそうに感じたりします。
わりと簡単に、頭、取り換えちゃたりもしますが・・・(*_ _)
それと、顔の表情と、体から感じる表情は、関係していると思うから。
例えば、こんなフレーズ C-♭E-F-#F-F-♭E-C (コードはC7)こんなフレーズ を弾こうとしたら、たぶん誰でもかた目尻が下がって、口は半開き、G音に上がりたいような、 行きたくないような、何とも中途半端な顔になりそうです。
ためしに、こんな音です。
下のボタンをクリックすると音が出ます。音量にご注意ください。(申し訳ないのですが 、音源は、MP3でしか、用意できていません。)
そんな、こんなを、想像したり、写真や動画を見たりしながら、作っています。
さて、実際の彫り方です。
小枝に直接顔を掘り込んだ物ではないのですが、それよりも表情のはっきりする画像があるので、 それを紹介します。
小枝に彫刻する場合も、髪と耳を除いて、全く同じ要領になります。
ご存知JAZZの定番アルバム「アンダーカレント」のミニチュアを作ろうとした時の画像です。
パソコンで画いた、jim hallの横顔です。普通のインクジェットのプリンターで印刷したものを、のりで素材 (白樺の少し太いところを板にしたもの)に貼り付けたところ。板の厚さは、2センチ位。
工程 1
糸鋸で外の輪郭を切り出したところ。
失敗した時の予備として、3個分用意しました。
工程 2
顔を正面から見ると、一番幅の広いのは、耳の先端あたりです。
次に広いのが、耳の付け根あたりになるので、その幅まで耳の輪郭に沿って、掘り込みます。
工程 3
工程3と同じ深さで顔の横全体を削ります。
工程 4
工程4を終えた顔を、正面から見たところ。
顔の正面中心に黒い線が引いてあります。これがけっこう大事で、
工程2で切り出した横顔の輪郭は、顔を横から見た時に一番高い部分のラインです。
このラインは、顔を正面から見た時の中心にあります。なので、この黒い線は最後まで残ることになります。
実際には、少し仕上げのゆとりを見込んでいますが、この線を消さないように進めます。
工程 5
顔に丸みを付けていきます。鼻は、目じりから小鼻に向けて斜めに幅が広がっていくので、 正面から見て斜めにカットラインを入れてから、頬の丸みを削り出します。
写真左→写真右の順に進んでいます。
削る時に気を付けることが一つあります。
顔の右を削ったら、左も同じだけ削るようにします。先を急いで片方だけ進めてしまうと、 後で左右のバランスを調整するのが難しくなります。上から見たり下から見たり、右から見たり左から見たり、 常に、左右のバランスを見ながら対称になるよう進めます。
工程 6
目を掘り出します。
工程6と工程7の画像を比べると、目の丸み部分が、6の画像より7の画像の方が出ているように 見えるかもしれません。
木彫の難しさの一つは、削りすぎるとほぼやり直しが利かないことだと思います。 なのに、突込みがあまいと、なかなか雰囲気が出ない。どの段階でどこまで削りこむかは、少々失敗を 繰り返さないと、掴めない感覚かもしれません。。
もちろん、このモデルの目も、丸み部分の外側を削り込んで引っ込めたものです。
この段階でも正面の中心線が残っています。
やっと、少し表情を感じられるようになったでしょうか。
工程 7
更に、詳細を加えていきます。
目、鼻、口に、より詳細が加わっています。
jim hallは、あまり髪が無いので、髪の生えている部分を表現するため、生え際の 地肌側を少しだけ彫りこんで、頭髪を表現してみました。
演奏家は、演奏中はだいたい目を閉じていると思うので、その分、目にバリエーションを 付けるのが難しいかもしれません。顔を作っていて感じるのは、口が顔の表情に与える影響の大きさ です。
鏡で自分の口元を良く見てみると、かなり微妙な詳細があることに気が付きます。 目を閉じている場合、ちょっとした口の動きは、目より表情に大きく影響するように感じます。
工程 8
耳を加工します。耳を最後に作るのは、構造上、壊れやすいから。
三個用意した顔の、下の二個と最後まで切り離さないのは、片手で持って、加工しやすいから です。
特に、小さいものを作る場合、作業のし易さを考えながら作っています。
大きさを比較するのに、タバコの箱を並べてみました。
工程 9
表面をサット仕上げて、頭の完成です。
工程 10
メガネがあったので、掛けて見ました。
頭の完成
頭の作り方は、以上です。
キャラクターの出来には、頭の比重が大きいと思うのですが、体がから感じられる表情?も、大切だと感じます。
Keith Jarrettを聞いていると、静かに、動かずに演奏しているように感じるのですが、動画を見るとすごい動きです。驚くほど。
そうかと思うと、かなりパワフルな演奏をしているように感じて聞いていると、実際には、たんたんと演奏していたり・・・。
演奏中の姿勢は、奏者によって様々です。
体を作る時、こここそ、イメージの膨らませどころです。自分のイメージを大切にして、想像力を使います。
もしも、実際には取らない姿勢であったとしても、目的は、あくまで<music・jazz>を感じるフィギュアを作ることです。
出来るだけリアルなものを作りたいとは思うのですが、本物の完全なコピー・縮小が、一番良いとは限らないのではないかと思うことがあります。
体のパーツを組み上げていると、ちょっとした腕の角度、肩の上げ下げ、腰を屈めるか反らせるか、特に、指を含めた手の表情で 受ける印象が、ガラット変わります。
jazzの躍動感を表現しようとすると、場合によって、誇張が必要なのかもしれません。
頭を作る時から出来上がりのイメージは、必要ですし、それに向かって作り進めるのですが、 途中にもっと良いアイディアが出来たら、そこは、即興で行ってOK!!
言ってることが、いいかげんに思われるかもしれません。
でも、即興演奏が真髄のjazzのフィギュアです。
演奏をしている気分で作っています。
旨くいかないときの妥協は良くないと思いますが、あちこち動かして面白いものが出来たら、その方がより良いと思います。
jazzが、より良く感じられるフィギュアを作ることから外れなければ、良いと思っています。
自作の人体図に合わせて、胴の長さ等を確認します。一木作りでも良いのですが、全体がイメージし易いので 胴体を三つに分けてつなぐところから始めています。
工程 1
ここからは、彫刻刀で、ひたすら削る作業が続きます。左が削りだす前の正面、右が背面です。
工程 2
一番上のブロックが、肩から胸のあたりまでの部分です。首を意識しながら、このブロックを少し削ったところです。
工程 3
中間のブロックは、胸からヘソあたりまでの部分です。 胴周りの寸法は、かなり余裕をみた大きさから始めているので 人体図に合わせながら少しずつ削り進めます。上のブロックも同時にバランスをとりながら、削っています。
工程 4
一番下が、ヘソから太ももの半分位までの部分です。足に丸みをつけたところです。
工程 5
全体に削り進めます。
工程 6
少し視点を変えてみるとこんな感じ。削る前と比べてみます。左が削る前、右が現在の状態です。
工程 7
頭をつけます。首の角度のわずかな違いで、受ける印象が大きく変わります。 目を閉じた状態で頭を下げると、内向きになり、暗く、思い込んだ印象となり、頭を上げると、少し 明るさを感じます。
工程 8-1
首を左右に回すと、また違った感じになります。
工程 8-2
今回は、こんな風にしました。
工程 9
足をつけます。
工程 10
太もも部分を削ります。
工程 11
下肢部分を削ります。
工程 12
靴を作ります。
左が材料に下書きをしたもの。
中央が糸鋸で輪郭を切り出したところ。
。右が完成したものです。
工程 13
靴を付けます。
工程 14
腕を取り付けるために、肩の部分に角度を付けて切り落としたところです。
工程 15
上腕を付けたところです。
工程 16
ここからは、腕と楽器の位置を合わせるために、腕の仮付けと微調整を繰り返し、ベストの角度に腕を取り付けます。 ベーシストの場合、右手も左手も、親指が楽器に接するので手のひらに、親指のみを取り付けた状態で位置合わせをします。
手のひらを作ります。樹皮の部分を手の甲に使います。
工程 17
右腕を仮付けしたところです。
工程 18
この辺で、台座に乗せます。
工程 19
楽器を持たせて見ます。実際には、ここまでの段階で、指を取り付けたときに指先が弦の上に届くよう、数回の調性を繰り返しています。
工程 20
右腕と同様に、調性を繰り返し、左腕を追加したところです。
工程 21
もう一度、楽器を持たせて見ます。
工程 22
指を付けていきます。白樺の細い小枝を短く切ってつなぎ合わせることで、指の関節を表現しています。
工程 23
手を取り付けます。
工程 24
もう一度、楽器を持たせて見ます。
体の完成
体の作り方は、以上です。
服の素材は木の皮です。硬いです。
どうして、こんな材料を使っていたかといいますと
私がこの人形を作り始めたきっかけは、外で偶然見つけたこの服の素材となる白樺の樹皮の模様が、すごく綺麗に見えたからです。 茶色に、白の点の模様が何とも味があるように見え、何故か強く惹かれるものがありました。
拾ったそれを持ち帰って、何か作ってみたい!!そう思いました。もともと、小型の家具を作るのが楽しくて、家の部屋には 手作りの家具がたくさんあります。木を加工しての物つくりは、少し慣れもあり、好きな仕事でした。
思いついたのが、「これでjazzの人形作ったら、イイ感じになりそう!」
もともと、目の届くところに何かjazzを感じられるものを置きたかったのですが、自分で作ろうとは、考えたことはありませんでした。
人体を作るということは、経験のないことでしたし、特に表情も含めて顔を作るのは、相当難しいことは、想像がついたので「顔を一つ作って、もしダメだったら、諦めよう」ということでスタートしました。
そんな思いで初めて作ったものが、galleryのトップ画像のベーシストの顔です。
jazzの楽しさを表現するのには、少しデフォルメされたキャラクターの方が良さそうに思えたので、そこを目標に、始めました。
思いのほか良くできたと思い込んでしまったのが、人形作りの始まりです。
そんな思い入れのある白樺の樹皮をスーツに仕立てて、フィギュアを完成させます。
後は、スーツの生地に見立てた樹皮を貼り付けて、完成となります。型紙を作ります。
足の型紙は、ほぼ左右共通なので、片側分で良いのですが、腕部分は、腕の動きによって、型紙を別々に作る必要があります。。
工程 1
フィギュアに当ててみて、合わない部分を修正します。左写真は上腕、右写真は右の太もも。
工程 2
樹皮を用意します。
工程 3
樹皮は、乾燥して丸まっています。
工程 4
アイロンで伸ばして使います。
アイロンの前に少し水に漬けておくと、伸ばしやすくなります。
工程 5
アイロンで平らになったところです。
工程 6
型紙を当て、樹皮を切り出します。
工程 7
全ての樹皮のパーツです。
工程 8
接着剤で樹皮をフィギュア本体に、貼り付けます。腕部分を張り終えたところです。
工程 9
下半身を張り終えたところです。
工程 10
全ての樹皮を張り終えたところです。
工程 11
耳をつけ、楽器を持たせて完成です。
服とキャラクターの完成
服の作り方は、以上です。
以上
木製キャラクターの作り方を写真で紹介しました。